二〇〇七年は団塊世代の大量退職が始まる。退職記念で旅行に出かける夫婦も多く、それを両親に贈るケースもあるだろう。夫婦二万円以内で一泊できる、おすすめの宿を専門家にきいた。「由布院 玉の湯」。人気が高い離れ形式の宿で、流行に敏感とされる団塊世代の志向をくんだ格好だ。プライバシーも保たれ「居心地がいい」 (岩佐さん)。 「都会から来た人にゆったり過ごしてもらおうという配慮が随所に感じられ、長年の会社勤めの疲れも癒やされるはず」 (三堀さん)との意見も寄せられた。
「旅館であってホテルの快適さを備えている」 (植田さん)のもおすすめの点のようだ。ベッドを備えた客室やバーかおるほか、各部屋の戸外は、テラスが設けられている。敷地内は雑木林で「野の花が安らぎを与えてくれる」(大口さん)とも。
西日本の二位「西村屋本館」も多くの選者が推す。純和風の城崎温泉の老舗で 「温泉、料理、サービスすべてがワンランク上」 (大島さん)という。特に、檜 (ひのき)の大浴場と露天風呂からなる「吉の湯こ「本の香りが漂い落ち酉る」 (石井さん)。
今回、上位に入ったうちの大半は小規模旅館だが、西日本の三位は、二百室を超す「加賀屋」だった。大浴場から七尾湾の景色をしめる。館内には加賀友作一や輪島塗など伝統工芸品九飾り豪華な雰囲気だ。「心に残るサービスが人気」(大□さん)との声も多い。 一方、接戦となった東口本は「あかん鶴雅別荘鄙の座」が一位。全室が露天風呂付きで「温泉さんまいが楽しめる点が退職記念の慰労にもいい」(鷲見さん)という。
「客室ごとにすべて異なる部屋のしつらえを楽しめる」 (石井さん)との意見もあがった。 「心の故郷」を目指す鄙の座では、食事はできるだけ個室形式の料理茶屋で提供するなどして従業員が極力客室に入らないように配慮している。 続く東口本の二位は、竹林にたたずむ純和風の「柳生の庄」。「静寂な自然の中で味わう懐石は絶品」(西山さん)という料理は、「柳生風」と称する定番メニューも人気が高い。例えば、火で熟した石の上で、牛肉やエビ、野菜などを焼く「温石(おんじゃく)焼き」などがある。
東日本の三位となったのは「つつじ亭」。自然林を生かし、五月中旬上八月上旬は山つつじも美しい。調査では今風の工夫を凝らす宿が高い評価を得た。食事に注目すると、東日本の「由布院温泉亀の井別荘」も「農家と契約し、放し飼いにしてもらった地鶏などこだわった食材を使用」 (鷲見さん)といった具合。細やかな宿側の気遣いも、退職記念に彩りを添えそうだ。
退職後の自由な時間を生かしてもらおうという観点から、価格は最も安く泊まれる時期の、しかも一番手ごろな部屋のものを掲載した。
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